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身も心も捧げる者 -1-



白と赤の光沢のある強化スーツを纏った戦士の足元に黒い躯に銀のアーマーを着けた剣士が仰向けに倒れている。
「邪剣士ルリーザ…」
剣士の頭を覆い顔の上半分を隠していた二本の角がある銀竜の兜は真っ二つに割られ、露になった美しい顔と鎧と
同じ色をした銀髪が額から流れでた鮮血で紅く染まっていた。
「赤い血… ルリーザ、どうして私たち人間と同じ赤い血を…」
これまで倒してきた邪竜帝国の兵士は人とは異なる姿で濃緑の血を流してきた。
だが、強化スーツの戦士の前に横たわる邪剣士ルリーザは人と同じ姿で同じ赤い血を流している。
「ウゥッ……ルリ…ザ… ちがう……わたしは…るり… ウウッ…」
邪竜帝国の邪剣士ルリーザは自分のことを『るり』と名乗り意識を失った。
彼女が意識を失う寸前、鎧と同じ色をしていた瞳と美しい銀髪は黒く変化した。
「『るり』? どう言うこと…なの」
足元で横たわっているルリーザの首に触れ、彼女の生死を確認していると強化スーツのフェースカバー内に
ルリーザが作り出した邪竜空間が消滅したことを告げるメッセージが表示された。
「ドラゴンレッド紫苑です。 邪剣士ルリーザを撃破、彼女を確保しました。町の邪竜兵はどうなっていますか」
『ドラゴンレッド 司令室です。 邪剣士バジルの乱入で多くの邪竜兵を取り逃がしました。
 ドラゴンイエローがバジルの攻撃を受けて負傷しています』
「了解です ルリーザの回収をお願いします」


「裕未君 怪我は大丈夫かね」
「はい 大したことありません。私が一週間 迅雷君が一ヶ月、弓永先生に拘束されます」
「ハハハ…拘束か  彼女にはドラゴン隊員の健康管理を一任しているからね」
「それより 石動(いするぎ)博士、ルリーザはどうですか? 何かわかりましたか」

ここは邪竜帝国と戦うドラゴンナイツの拠点 石動研究所。
邪竜帝国邪剣士ルリーザを死闘の末、撃破捕獲に成功したドラゴンレッド紫苑裕未が
石動研究所創設者で司令の石動道三の部屋を訪れていた。
「ルリーザの体を分析した結果、彼女は間違いなく人間だと言うことが判った」
「エッ! 本当ですか石動博士」
「彼女の体に不自然のものは何も無い、私たちと同じ人間だよ。いま彼女の装備品の分析を行っているが
 これまでに回収した邪剣士、邪竜兵の物と同じだろう」
「詳しいことはルリーザ…『るり』と名乗った人が目を覚ますのを待つしかないってことですね」
「そうなるね」
石動道三と紫苑裕未は壁のモニターに映し出されている治療中のルリーザを見つめていた。

数年前、廃墟となった古い神社の祠で発見された文献で石動道三は
かつて、人とは異なる姿をした邪悪な生命体が存在し、彼らが五つの竜珠の力に敗れ、永い眠りについたこと
その邪悪な生命体が再び目覚める日が近いことを知ると、その文献の記述に従い、彼らに対抗する力
五つの竜珠とその力を自在に操ることができる者を探し出し、復活した邪悪な生命体を迎え撃った。



「邪竜王様、ルリーザが人間の手に堕ちました」
邪竜帝国。彼らはワニ、トカゲ、ヘビと言った爬虫類と人が合体したような姿をしており、硬い鱗で覆われた躯と
鋭い牙と爪を持ちながら、まだ人間が手にしていない未知の金属でできた鎧兜に剣や槍、弓矢で武装していた。
「グルルル 人間を支配する為に生み出した力が我が野望を阻む力になるとは…」
架空の生物、竜を想像させる姿をした邪竜王がその怒りをぶつけるかのように、食事として運ばれてきた人間の腕を喰い千切る。
「グルルル ルリーザは我が手より竜珠を奪い我らを深い眠りに就かせた忌まわしき人間が一子、その報いとして未来永劫
 我らの奴隷として仕えさせるつもりであったが……邪竜帝国に弱者は不要。 ルリーザを倒した戦士、竜珠の力を纏いし
 戦士とあらば…… グフフフ 我らは新しい力を得、人間は我らに勝利する術を失う。 まさに一石二鳥、そうは思わぬかギール」
その問いかけに邪竜王の片腕、邪竜帝国参謀ギールが畏まり答えた。
「邪竜王様、ですぎたまねと思いましたが、すでに我が手の者を放っておきました。 それとご報告がございます」
血が混ざった涎を滴らせ、邪竜王が金色の瞳を輝かせる。
「グルルル なんだギール」
「科学者と呼ばれている人間から得た興味深い知識を捕らえた人間に試してみました。まだ実験段階ですが」
ヘビに似た顔をしたギールは部下に命令すると一人の人間の女を邪竜王の前に運ばせた。

邪竜帝国は人間を食べることでその人間の知識を自分のモノにできる。
だが人間の知識すべてを自分のモノにできる訳ではなかったが、参謀ギールはその能力に長けており
捕食した人間の知識すべてを自分のモノにすることができた。

「まだ、実験段階ですので詳細なご説明は控えさせて頂きますが、邪竜王様、暫くこれをお傍に置かせて頂けないでしょうか
 邪竜王様もご満足頂けるのではないかと」
「ギール、我に実験の手伝いをせよと申すか。グフフフ、よかろう」
「ありがとうございます。邪竜王様」

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magosakuさん。ご無沙汰しています。以前、「めっちー」と名乗っていたものです。憶えていますでしょうか? その節はお世話になりました。
magosakuさんがブログを始めたとのことで、寄らせていただいたところ、magosakuさんの新たなSSが読めるとは思ってもみませんでした。
月並みな言葉で申し訳ありませんが、頑張ってください。影ながら応援しています。

おおー
新作ですね?
これからが楽しみです。
続きをわくわくしながら待ってますねー。

<metchyさん> お久しぶりですね
もちろん憶えていますよ
私の方こそ、その節は貴重なお言葉を頂けたので感謝しております
また以前のようにご意見ご感想など頂ければと思っていますので
これから宜しくお願いします


<舞方さん> ありがとうございます
楽しんで頂けてよかったです
良く似た作品がいっぱいあるので
新作のようで新作でない気もしますね
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