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Awakening to darkness - 感染 -



麻由美は薄明るい部屋にあるベッドの上で目を覚ました。
(こ…ここは…)上体を起こし、部屋の中を見回そうとすると、
「ようこそ、『ウィルス』前線基地へ。気が付きましたか、ホワイトバスター白石麻由美さん」
この世のものとは思えない美しい声で、突然、話かけられた麻由美は寝かされていたベッドから飛び起きて
声のした方に視線を向けた。
(う、うそ、気配を全く感じなかった)
黒で統一された部屋の奥にある少し高くなった場所に声の主は座っていた。
透き通るような白い肌に黒く長い髪、黒い口紅にアイシャドー。
それだけでも妖艶な美女が光沢のある右袖と左裾のないボディスーツにウィルスの紋章入りベルト
露出している右手と左足には長めのグローブとブーツを纏った姿で豪華なソファーに身を任せていた。
「はじめまして、白石麻由美さん。私は『クレズ』と申します」
(クレズ…新しい敵……)
「あなたたちバスターズとニムダの戦い、拝見させて頂きました。
 驚きましたわ。ニムダを倒した相手が、こんなに可愛い娘だったなんてね」
(わたし…ニムダの爆発に巻き込まれて気を失ってたのね…………ブ、ブレスが………!?)
麻由美は変身ブレスレットが奪われていることよりも、自分が異様な格好をさせられていることに驚いた。
(な、なによ…これ…)
麻由美の両手両足、そして身体は人の血を浴びたように赤く染まっていた。
「あなたの服はボロボロになっていたので、それに着替えて頂きました。それと
 ブレスレットはお借りして、色々と調べさせて頂いてます。
 お返しすることはできないと思いますけど………あっ、あなたには必要なくなるわね」
(……ブレスレットが必要なくなる?………そうよね、わたしは…)
「あ、言い忘れるところでした。そのスーツには『ウィルス』に対して危害を加えることや
 自分を傷つけることができないように仕掛けが施してあるの」
(……無駄なことはするな、大人しくしていろ。ってことね…………みんな…無事なのかな…)
麻由美は抵抗することを諦め、冷静に自身の姿を見つめ直した。
身体と両腕は首から指先まで包み込むボディスーツ、足は腿の途中まであるブーツを着けられている。
頭部と腿の一部以外、全てが少し光沢のある血のような赤で覆われて、胸の中心にはウィルスのエンブレムが
鈍く輝いていた。
(この服……身に着けている感覚や拘束感が全くない………でも…なんだろう……何か不思議な…
 身体が火照るような…この感覚…)
麻由美は、はじめて体験する不思議な感覚に少し不安を抱いていた。
「とってもお似合いよ。着心地はいかが?」
「そうね。とっても悪趣味で最悪の気分ね」麻由美は初めて言葉を口にした。
「あら、残念。でも、直ぐに気に入って頂けると思うけど…」
クレズの妖しい微笑みに麻由美の不安は高まる。
(気に入る?…どう言う意味なの………???……火照りが…強く…)
麻由美は押し寄せる不思議な感覚を振り払うかのように口を開く。
「クレズ。早く、私を処刑したらどうなの」
「うふふふ……なぜ? なぜ、私の部下になる優秀な戦士を処刑する必要があるの?」
(え? 私の部下になる? 何言ってるのよ)麻由美は驚きの目でクレズを見ていた。
「あなたには感謝するわ。ニムダを葬ってくれて……ホントにありがとう。
 そのお陰で、私はワーム総帥に次ぐ権力(ちから)を手に入れる事ができましたから。
 それでね、その権力を揺ぎ無いモノにする為に、ニムダを討った戦士を私の部下にしたいの。
 美しい優秀な戦士……麻由美さん。私の『従者』になってもらえないかしら」
「ば、馬鹿なこと言わないで。私が『ウィルス』になる訳ないじゃない」
「やっぱり、簡単には『従者』になってもらえないみたいね………うふふ。でも、もう決まったことなの。
 あなたは『ウィルス』の悦びに目覚め、『ウィルス』の一員であることを誇りに思うようになるわ。
 そして、あなたは私のモノになるの。何もかも、私に捧げる忠実な『従者』に」
(この人…洗脳ウィルスを……でも、チャンス…私に洗脳ウィルスが効かないこと、この人は知らないみたい。
 上手く、洗脳されたフリをすれば脱出できるかも…………でも、この火照りは一体………熱い…)
「ふざけないで! 何をされても、あなたの『従者』になんかならない」
(か…身体が…熱い………!?…ぬ…濡れてる……私…感じて……)
「あらぁ、どうしたの、麻由美さん。震えているようですけど、怖いの? それとも、感じちゃってるの?」
(…ま…まさか……ウィルス…)
「うふふふ。あなたは、私が『従者』に求める全て…いえ、それ以上のモノを兼ね備えていたわ。
 ゴメンなさい。眠っている間に、あなたの全てを調べさせてもらったの。
 もちろん、私たちのウィルスに対する抗体のこともね……そうね、教えてあげたほうがいいわね。
 あなたの抗体、『トロイウィルス』や『ニムダウィルス』には驚くほど有効みたい………だけど、
 私の『クレズウィルス』には、何の役にも立たないわよ。どういう意味かおわかり…よね。
 あなたが身に着けているスーツにね……仕込んであるの『クレズウィルス』
 流石にバスターズね。普通の娘なら、疾っくに快楽の虜になっているのに、まだ耐えているなんて。
 でも、そろそろ限界のようね」
(こ…こいつの…余裕…そう言うこと……で…でも…洗脳…ウィルスなんかに………)
クレズはソファーから立ち上がり麻由美に近づいた。
「私のウィルス、気に入って頂けたようね…麻由美さん。あなたに『ウィルス』の悦びを教えてあげるわ」
(…熱い……体が…熱い……………み…みんな…助けて……わたし…怖い…)
麻由美は自分の身体を抱きしめるように両腕を左右にまわし、小さく震えながらその場に両膝をついた。
(…力が…入ら…ない……………気持ちイィ……とっ…ても…気持ち…イィ…)
「麻由美さんどうしたの? もう、お話もできないくらい感じてるの?」
「ぜ…ぜったいに…あなたの…おもい…どおりに…なんか…なら……ない…」
麻由美の顔は紅潮し呼吸も荒く、話もままならい状態になっていた。
(だめ……ウィルスが…こん…なに…きもち…いい…なんて…………もう…なにも……な…い…)
「あらあら、まだそんなこと言ってるの? あなたの身体はこんなに反応してるのに」
クレズが麻由美の背中に優しく手を触れる。
「あぅぅ」麻由美は体を反らせて襲いくる絶頂感に耐えていた。
「身体に触れただけでそんなに感じるの? じゃあ、これはどうかしら?」
クレズは麻由美の秘所に手を遣ると軽く力を込めた。
「ひっ…はぁうっく…………い…いぃぃぃ…」麻由美は更に体を反らせる。
「素敵な声……もう我慢しなくていいのよ。これからもっと気持ち良くしてあげる。
 そして、何もかも忘れて生まれ変わりなさい。私に全てを捧げる『従者』に」
クレズは麻由美の手に自分の手を重ねるとそのまま麻由美の秘所に誘った。
「や…やめ………て…………うくぅ…」
麻由美に抗う力はなく、焦点の合わない目で弱々しく頭を左右に振ることしかできなかった。
「もうこんなに濡れちゃってる」
「うぅぅぅ………くうぅぁぁ…あぁぁ…いぃぃぃ…感じる……も…もっと…はぅ…」
麻由美の悦びを確認したクレズは自身の手を麻由美の手から外し麻由美の様子を窺った。
その手は止まる事なく自慰を続け、更なる快楽を求めていた。
(うふふふ、そう、そうよ。もっと楽しみなさい)

貪欲に快楽を貪る麻由美の姿に先程までの戦士の面影は無かった。
(すっかり、淫れちゃって…良い感じね)
「こんなに濡らして…可愛いお口……スーツにはっきりと浮かび上がってる」
クレズがスーツに浮き出たその口を優しく撫でると麻由美の濡れた秘唇が姿を露にした。
「このまま放って置いたら、あなたは徒のトロイ兵になってしまうわ。
 あなたには私の『従者』になってもらわないとね………麻由美、私の声が聞こえる」
「…は…い……あぁっく…いぃ……」
クレズの声に麻由美は素直に頷き返事をかえす。
「今からもっと気持ち良くしてあげる」
「は…い……もっと…おねがい…」
「拒絶しないで素直に受け入れるのよ」
「は…い」
クレズが自身の秘所に手を遣り水面に指を沈めるかのようにスーツの上から2本の指を深く潜り込ませた。
「あぁ…いぃぃ…私も興奮しちゃってこんなに…濡れてるわ……うっ…くぅぅ…」
秘所から取り出されたクレズの指は妖しい輝きを放っていた。
「さぁ、受け入れなさい、麻由美。偉大なる『ウィルス』の力を…」
「は…ぃ」
クレズは妖しい輝きを放つ指をゆっくりと麻由美の秘所に潜り込ませる。
「ヒャ…イッ…イィィィ……イクぅ………うぐぅぅ…」
麻由美は身体を大きく反らせ声をあげたが、その表情は苦悩と苦痛に歪んでいた。
彼女の中に僅かに残る『光』が『闇』を拒絶する。
「うぅぅぅ…あがっ…ひぃぃ…」麻由美は頭を左右に振りながら苦痛の声を漏らしていた。
「麻由美、拒絶しちゃダメよ。何も考えないで、力を抜いて全てを受け入れなさい」
「あぁぁ…あっ…くっ…くぅ………………い…いや……」
見開かれた麻由美の瞳に残る僅かな『光』。
「ど…どうしてなの!! 全てを受け入れてイッちゃいなさい」
(何なのよ、この娘。どうして私のウィルスに、ここまで抵抗できるのよ)
「…ま…まけない……みんなが…みんながたすけに…………それまでは…ぜったいに……ま…け…な……」
 麻由美はそう呟くと深く冷たい闇へと堕ちていった。
「……そう…そうなの……そんなに仲間を信頼しているの…………でも、心配しないで、麻由美。
 直ぐに、その苦しみから助け出してあげる……仲間の私が」
意識を失った麻由美を見つめるクレズの美しい口元に妖しい笑みが零れた。


Rouge et noir - 2 -



「ちょっと待ったァァ!!」
重なり合うように倒れている三人に近づくシルヴィーの前に
あやめと真琴が立ちはだかり、あやめは上段に真琴は中段に鉄パイプを構えた。
「ホォ… そんな物で私の邪魔をする。  お前達も『X-fix』か、ならば抹殺するだけだ」
「えっくすふぃくす?  何それ?   僕は春日真琴! こっちは榊山あやめ先輩
 あなたはかなりの使い手とお見受け致しました。よろしければお名前をお聞かせ願いたい」
「真琴 冗談言ってる場合じゃない。 この人、かなり強いよ」
シルヴィーの殺気に反応したあやめは素早く相手の動きに反応できる
最も攻撃的な構え八相に構え直していた。
あやめが構えを変えたことで目の前の相手が想像以上の実力を
持っていることを理解した真琴の顔からも笑顔が消える。
「面白いヤツらだ、いいだろう相手をしてやる。 こい」
「先輩、僕から行くね    セヤァー!!」
先陣を切りシルヴィーの喉元目掛けて突きをはなつ真琴。
その突きをシルヴィーが剣で受け流すと真琴をフォローするように
シルヴィーの間合いの外からあやめの突きが襲う。

絶えずあやめか真琴のどちらかがシルヴィーに攻撃を仕掛け
シルヴィーが防戦一方のように見えたが彼女はそれを楽しんでいるようだった。
(いいコンビネーションだ…)
互いの動きを把握してシルヴィーを攻撃するあやめと真琴の連携攻撃に『X-fix』の三人も見惚れていた。
「へ~、栗栖ちゃん、或徒ちゃん あの二人やるやん」
「何、関心してるんだよ!! あいつら民間人だぞ、『X-fix』のあたしたちが民間人に」
「或徒ちゃん、民間人て言い方やめようよ。 愛流ちゃんもボッとしない
 態勢を立て直して、シルヴィーを攻撃しないとあの人たちが危ないよ。
 もう一度、フォーメーションβでいいよね。 或徒ちゃん、ケガ大丈夫だよね」
リーダー栗栖が或徒と愛流に現状を把握させると反撃の態勢を整える。

「ハァ、ハァ、ハァ、あやめ先輩、ハァ、ハァ、この人、ハァ、強い、ハァ」
「ふぅ…ふぅ…ふぅ……真琴、大丈夫?  まだ、行けそう?」
「ハァ、ハァ、いやァ、ちょっと、ハァ、ハァ、キツイです、ハァ、お腹すいたァ」
「ふぅ…しかし、ここまで見事にかわされると腹が立つわね。  ふぅ…ふぅ……ふぅぅぅ
 よし!!  真琴はしばらく休んでて   ハアァァァ」
あやめが自分の持つ得物のリーチを活かし単独でシルヴィーへの攻撃を再開する。
(あれだけの攻めを繰り返して、まだ単独で攻撃してくるのか… 面白い)
あやめの攻撃を冷静に分析しながら、かわし続けるシルヴィーに『X-fix』の三人も加わろうとした。
「シルヴィー!! 次はあたしたちが相手だ!!  民間人はここから避難しろ!!」
「或徒ちゃん!  すみません、助けて頂いたのに失礼なこと言って
 私たちが時間を稼ぎます。ですから、その間にお二人はここから逃げて下さい」
「いま逃げろって言った?  ホント無礼なヤツ!!」
栗栖の言葉に敏感に反応した真琴が切っ先を三人に向けて構えた。
「真琴、やめなさい。 ケガは大丈夫なのですか? どういう経緯の戦いかは存じ上げませんが、
 ようするにわたしたちが居ては邪魔になる。 と言うことですね」
あやめは上段に構えたままシルヴィーから目を離さず呼吸を整えている。
「そう言うことだ。 さっさとどこかに行ってくれ!」
「或徒ちゃん!! ホントにすみません。
 お二人の連携がホントに凄かったので或徒ちゃん、嫉妬しているんです」
「五月蝿い!!  愛流がもっと上手くやれば、わたしたちだって」
「ウチとちゃう!! 或徒ちゃんや!」
(『X-fix』とは無関係の人間のようだな……榊山あやめ 春日真琴)
しばらく五人の口論を傍観していたシルヴィーが剣をおさめ踵をかえした。
「逃げるのですか?  まだ、勝負がついていませんが」
その言葉を聞いた真琴と『X-fix』の三人が一斉にシルヴィーを見やる。
「邪魔な連中が居てはな…」
「おい!! 邪魔って誰のことだ!!」
解ってはいたがシルヴィーの言葉に或徒は声を荒げた。
「キミたちに決まってるじゃん」
その場の空気から相手に戦意は無く、既に戦いが終わっていることを感じ取った
真琴が小声で囁くと或徒は真琴を睨み唇を噛みしめていた。
「『見逃してやる』と言うことですか。 でも、このお三人ならあなたには負けないと思います」
あやめも構えを解きシルヴィーに言葉を返すと
「榊山あやめ、一つ聞きたい。 なぜ、お前達は私を恐れず挑んできた」
その問いかけに真琴が真剣な表情で答えた。
「それは、僕の中にある武士の」
「真琴  黙ってなさい」
「はい…」
「すみません。 シルヴィーさん…でしたね
 私も真琴も怖いと思う前にあなたと剣を交えて見たいという衝動に駆られた。 それだけです」
「なるほど ならば、次に交えるときは、もう少しまともな得物で戦いたいものだな」
あやめは手にしている鉄パイプにちらりと目をやると
「そうですね、これではあなたに失礼ですね」
嬉しそうな表情で語り合うシルヴィーとあやめ。
だが直ぐにシルヴィーは厳しい視線を『X-fix』の三人に向けた。
「『X-fix』、次はもう少し楽しませて欲しいものだな」
そう言い残すとシルヴィーの姿は夕闇に溶けるように消えていった。

「私たちの完敗ですね。 あやめさん、真琴さん、今日は助けて頂いてありがとうございました。
 あっ、すみません。わたしはこのチームのリーダーで赤城栗栖と申します。こっちが瀬川或徒で
 こっちが水無瀬愛流です。わたしから詳しいことをお話する訳にはいかないのですが、これだけは
 今日のことでお二人も『S.S.B』に狙われることになると思います。詳しいことはのちほど別の者
 がお伺いすると思いますので、私たちはこれで失礼します。或徒ちゃん、愛流ちゃん、撤収だよ」
「ふざけるな!! あんたたちが割り込まなければ… あいつだけはわたしの手で…
 この手で倒さなければだめなんだ……   わたしは親友のカタキを討つことも…」
シルヴィーに命を奪われた親友の顔が或徒の脳裏に浮かび涙が頬をつたう。
「シルヴィーさんとあなたがたにどのような因縁があるのかは存じ上げませんが、ただ
 今の皆さんではシルヴィーさんに勝つことはできないのでは…」
あやめの言葉は『X-fix』の三人にとって敗北よりも辛い一言だった。


身も心も捧げる者 -1-



白と赤の光沢のある強化スーツを纏った戦士の足元に黒い躯に銀のアーマーを着けた剣士が仰向けに倒れている。
「邪剣士ルリーザ…」
剣士の頭を覆い顔の上半分を隠していた二本の角がある銀竜の兜は真っ二つに割られ、露になった美しい顔と鎧と
同じ色をした銀髪が額から流れでた鮮血で紅く染まっていた。
「赤い血… ルリーザ、どうして私たち人間と同じ赤い血を…」
これまで倒してきた邪竜帝国の兵士は人とは異なる姿で濃緑の血を流してきた。
だが、強化スーツの戦士の前に横たわる邪剣士ルリーザは人と同じ姿で同じ赤い血を流している。
「ウゥッ……ルリ…ザ… ちがう……わたしは…るり… ウウッ…」
邪竜帝国の邪剣士ルリーザは自分のことを『るり』と名乗り意識を失った。
彼女が意識を失う寸前、鎧と同じ色をしていた瞳と美しい銀髪は黒く変化した。
「『るり』? どう言うこと…なの」
足元で横たわっているルリーザの首に触れ、彼女の生死を確認していると強化スーツのフェースカバー内に
ルリーザが作り出した邪竜空間が消滅したことを告げるメッセージが表示された。
「ドラゴンレッド紫苑です。 邪剣士ルリーザを撃破、彼女を確保しました。町の邪竜兵はどうなっていますか」
『ドラゴンレッド 司令室です。 邪剣士バジルの乱入で多くの邪竜兵を取り逃がしました。
 ドラゴンイエローがバジルの攻撃を受けて負傷しています』
「了解です ルリーザの回収をお願いします」


「裕未君 怪我は大丈夫かね」
「はい 大したことありません。私が一週間 迅雷君が一ヶ月、弓永先生に拘束されます」
「ハハハ…拘束か  彼女にはドラゴン隊員の健康管理を一任しているからね」
「それより 石動(いするぎ)博士、ルリーザはどうですか? 何かわかりましたか」

ここは邪竜帝国と戦うドラゴンナイツの拠点 石動研究所。
邪竜帝国邪剣士ルリーザを死闘の末、撃破捕獲に成功したドラゴンレッド紫苑裕未が
石動研究所創設者で司令の石動道三の部屋を訪れていた。
「ルリーザの体を分析した結果、彼女は間違いなく人間だと言うことが判った」
「エッ! 本当ですか石動博士」
「彼女の体に不自然のものは何も無い、私たちと同じ人間だよ。いま彼女の装備品の分析を行っているが
 これまでに回収した邪剣士、邪竜兵の物と同じだろう」
「詳しいことはルリーザ…『るり』と名乗った人が目を覚ますのを待つしかないってことですね」
「そうなるね」
石動道三と紫苑裕未は壁のモニターに映し出されている治療中のルリーザを見つめていた。

数年前、廃墟となった古い神社の祠で発見された文献で石動道三は
かつて、人とは異なる姿をした邪悪な生命体が存在し、彼らが五つの竜珠の力に敗れ、永い眠りについたこと
その邪悪な生命体が再び目覚める日が近いことを知ると、その文献の記述に従い、彼らに対抗する力
五つの竜珠とその力を自在に操ることができる者を探し出し、復活した邪悪な生命体を迎え撃った。



「邪竜王様、ルリーザが人間の手に堕ちました」
邪竜帝国。彼らはワニ、トカゲ、ヘビと言った爬虫類と人が合体したような姿をしており、硬い鱗で覆われた躯と
鋭い牙と爪を持ちながら、まだ人間が手にしていない未知の金属でできた鎧兜に剣や槍、弓矢で武装していた。
「グルルル 人間を支配する為に生み出した力が我が野望を阻む力になるとは…」
架空の生物、竜を想像させる姿をした邪竜王がその怒りをぶつけるかのように、食事として運ばれてきた人間の腕を喰い千切る。
「グルルル ルリーザは我が手より竜珠を奪い我らを深い眠りに就かせた忌まわしき人間が一子、その報いとして未来永劫
 我らの奴隷として仕えさせるつもりであったが……邪竜帝国に弱者は不要。 ルリーザを倒した戦士、竜珠の力を纏いし
 戦士とあらば…… グフフフ 我らは新しい力を得、人間は我らに勝利する術を失う。 まさに一石二鳥、そうは思わぬかギール」
その問いかけに邪竜王の片腕、邪竜帝国参謀ギールが畏まり答えた。
「邪竜王様、ですぎたまねと思いましたが、すでに我が手の者を放っておきました。 それとご報告がございます」
血が混ざった涎を滴らせ、邪竜王が金色の瞳を輝かせる。
「グルルル なんだギール」
「科学者と呼ばれている人間から得た興味深い知識を捕らえた人間に試してみました。まだ実験段階ですが」
ヘビに似た顔をしたギールは部下に命令すると一人の人間の女を邪竜王の前に運ばせた。

邪竜帝国は人間を食べることでその人間の知識を自分のモノにできる。
だが人間の知識すべてを自分のモノにできる訳ではなかったが、参謀ギールはその能力に長けており
捕食した人間の知識すべてを自分のモノにすることができた。

「まだ、実験段階ですので詳細なご説明は控えさせて頂きますが、邪竜王様、暫くこれをお傍に置かせて頂けないでしょうか
 邪竜王様もご満足頂けるのではないかと」
「ギール、我に実験の手伝いをせよと申すか。グフフフ、よかろう」
「ありがとうございます。邪竜王様」

Awakening to darkness - 捕獲 -



「ニムダ、これで終わりにしてやるよ!」
「小僧が生意気な事を、貴様ら如き下等な人間に、このニムダが倒せるものか」
「言ってろ! 美幸さん、あの害虫、さっさと『駆除』して帰ろうぜ。俺が一撃で仕留めてやる!」
「鉄平、油断しないの」
(ニムダには、鉄平の『 Get rid of vermin 』を躱されている。
 あの時は、ニムダも傷ついていたから反撃されなかったけど今回は違う。
 もし、躱されたら間違いなく私たちが殺られる…ここは…)
「スラッシュでいきます。麻由美、いいわね」
ブラックバスター黒田美幸は鉄平のシュートではなく、麻由美のスラッシュを選択した。
「了解です。『 Get rid of vermin 』スラッシュ…」
「ちょ、ちょっと待って、待ってよ。美幸さん俺にやらせてよ。あいつには…」
「駄目よ」
「もう、鉄平は引っ込んでなさいよ。また、避けられたらどうするのよ」
ピンクバスター桃山泉水が鉄平と美幸の会話に首を突っ込んできた。
「うるさい。ガキは黙ってろ」
「誰がガキよ。鉄平もあたしと同級じゃないのさぁ」
「いい加減にしなさい」美幸が2人を静かにさせる。
「いきます。『 Get rid of vermin 』スラッシュフォーメーション」

バスターズの必殺技『 Get rid of vermin 』には2つのモードが用意されており、
レッドバスターのブラスターによる狙撃とホワイトバスターのソードによる斬撃。
どちらも全員の強化スーツのパワーをレッドまたはホワイトに集める必要があり、その間、
バスターズは無防備な状態になる上、発動後は強化スーツの攻撃力・防御力共に著しく低下する。
この技を使用する時は一撃で相手を仕留めなければならなかった。

(待っていたぞ、この瞬間を。今日で貴様らともお別れだ)
ニムダはフォーメーションに入ったバスターズ目掛け突進していた。
(来るの?……ま、まさか…ニムダは『 Get rid of vermin 』のウィークポイントを…)
「ダメ、みんな離れて。このままだと…」
「麻由美、私たちのことは気にしないで、あなたはニムダを倒すことだけを考えなさい」
「そうだよ。麻由美さん。もう少しでチャージが完了するんだよ」
「麻由美さんがニムダを倒してくれたら、俺たちが動けなくても問題ないじゃん」
(そんな…無理よ。至近距離で爆発に巻き込まれたらパワーダウンしたスーツでは……
 でも、今なら、今ならまだ間に合う)
「『 Extermination 』 美幸さん、いきます。みんなは少しでも後ろに下がって…」
「麻由美、駄目よ。まだ、チャージは完了してない」
「大丈夫です。必ず仕留めてみせます」
「麻由美さん、無理だよ」
突進してくるニムダに向かって光り輝くソードを手にした麻由美が走り出す。
「この一撃に全てを賭ける。ニムダ、消えてなくなりなさい」
「小娘1人に、このニムダが止められるものか」
2人が激しくぶつかり合い麻由美は数メートル押し戻されて踏み止まった。
「このニムダが…下等な人間ごときに……」
麻由美の放った突きがニムダの胸を貫いている。
(勝て…たの…)麻由美がニムダから離れようとしたとき、
「…せめて…せめて、貴様だけでも…道連れに……」
ニムダが麻由美に組み付きそのまま倒れると、激しい光と衝撃波が周囲の空間を包み込む。
その衝撃の凄まじさに残りのバスターズも吹き飛ばされていた。


この戦いの一部始終を見ていた人影があった。
「あのニムダがこうも簡単に倒されるなんて信じられません。バスターズ、私に倒せるのかしら」
そう話す顔には余裕とも思える不敵な笑みを浮かべている。
「あら?」
収まり始めた爆煙の中に倒れている人影を見つけた謎の人物がその人影に歩み寄る。
「この娘、白いスーツの……あの爆発に巻き込まれて無事だったの。凄いわねあのスーツ。
 でも、あなたにはここで死んでもらったほうが………可愛い顔……ふふふ、この娘…使えそうね」

謎の人物は従えていた兵士に気を失っている麻由美を運ぶように指示を出すとその場をあとにした。


Rouge et noir - 1 -



「あやめ先輩、今日こそ一本獲ってみせますからね」
「真琴、まだヤル気なの 部活で散々練習したとこじゃない」
「まだまだです。 これからウチに少年剣士がわんさと押し寄せて来るし
 先輩、今日も手伝って下さいね。勝負はその後でいいですから」
「だから、なぎなたの私がどうして剣道を教えなきゃいけないのよ」
「何言ってるんですか、あやめ先輩 剣道出身じゃないですか。 しかも、僕より段位上だし
 先輩は僕の目標だったんですよ。なのに大学入ったら、なぎなたに転向しちゃうんだもん。
 ずるいですよ、勝ち逃げなんて卑怯です。絶対に許しませんから」
「はいはい、申し訳ございませんでした。喜んであなたとの勝負お受け致します」
某女子大のなぎなた部に籍をおく榊山あやめと同大学付属高校剣道部に籍をおく春日真琴。
二人は幼馴染で歳はあやめの方が三つ上、真琴はあやめを姉のように慕っており
あやめも真琴を妹のように可愛がっていた。

あやめの大学進学が決まると真琴はあやめが行くことになった
大学の付属高校をあやめには内緒で受験し見事合格していた。
そして、あやめは真琴の粋な計らいで真琴が下宿する
彼女の祖父が開く剣道場に真琴と一緒に下宿するハメになってしまった。

「どうして真琴は私に勝ちたいの?」
「どうして勝ちたいの? ですと、言ってくれますね あやめ先輩
 無敗の余裕ですか。 わたしが先輩に勝負を挑むのは…」
「挑むのは?」
「自分より強い者に勝負を挑み、それを乗り越えて行く。 それが私の武士道だからです!」
「………はいはい」

二人が訳のわからない会話をしながら工事現場を覆っている壁の横を通り過ぎようとしたとき
黒い影が壁を突き破り、彼女たちの前で瓦礫の下敷きになった。
「イッテー……愛流、ちゃんとフォローしなよ!!」
鉄パイプや鉄板の下から黒に緑をあしらったスーツを身に着けた少女が
腕を押さえながら立ち上がり、仲間と思われる人物を叱咤すると
壁の向こうから関西弁で答える声がかえってきた。
「ちょっと待ち言うたのに或徒ちゃんが行くからや!」
「るっさい!! 愛流がとろいから…」
視界の端に映った人影に或徒の言葉が止まり、視線だけをゆっくりとその人影に移した。
「あの、大丈夫ですか? ケガしたんじゃないですか?」
「な、なになに、喧嘩? え? 変な格好…え? 撮影か何かやってるの?」
≪おい、栗栖、民間人がいる。二人だ≫
或徒はサイコキネシス能力を使い、栗栖と愛流に二人の存在を伝える。
≪今はシルヴィーを抑えるほうが優先よ。 そっちはバックアップに任せましょう≫
≪ああ。 もう一度、フィックスフォーメーションβだ!! 愛流しっかりやれよ≫
≪悪いのはウチとちゃう、或徒ちゃんや!!≫
自分たちの方を横目で睨んだかと思うと穴の開いた壁の中に飛び込んで行く少女に
真琴が口を尖らせてあやめに訴える。
「感じワルぅ~ シカトだよ、シカト!」
「真琴、怒らないの。 やっぱり映画かテレビの撮影かな?」
あやめが穴の開いた壁に近づきそっと中を覗き込むと、悲鳴と共に建設途中の建物から土煙が上がった。
「真琴 少しヘンだよ。 カメラとか全然ないし、それに…… さっきのコより変な格好した人がいる」
「えっ、なになに、どこどこ、   ウソ、何あれ……カッコいい…」
二人が見やる視線の先には露出度の高いシルバーのアーマーで身を固め
両刃の剣を手にした女性が髪をなびかせ、土煙に向かって歩いて行く姿があった。
「って、あやめ先輩、あれ…何ですか? すっごくヤバイ空気を感じますけど」
「そうね、さっきのコ、腕をケガしたみたいだったし、助けに行ったほうがいいかも」
「ううん… 先輩、僕、震えてる…」
「怖いの? だったらココに居ていいよ」
「違います!! あの銀色の人、とっても強そうじゃないですか。 僕の中で武士としての魂が…」
「冗談言ってる場合じゃないわよ」
あやめが壁に立てかけてあった鉄パイプの中から自分に合った長さのモノを手に取り走りだすと
真琴も同じように適当な長さの鉄パイプを取りあやめの後を追った。


プロフィール

孫作 ( magosaku )

Author:孫作 ( magosaku )


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