2ntブログ
携帯アクセス解析
  1. 無料アクセス解析

身も心も捧げる者 -4-



「グフフフ いまはこのメスが邪竜のメスになることを望むように準備していると言う訳か」
「はい、人間のメスが邪竜のメスになることを望まなければ『拒絶反応』でメスは命を失います」
「グフフフ なにかと面倒な奴らだな」
ギールが裕未の顔を覗き込み、彼女の反応を確認するとほくそ笑んだ。
「ん…んん…もっと…ゾクゾクさせて……もっとキモチよく…なりたいの…」
「クックックッ そろそろいい頃合のようです。邪竜王様」
「グフッ グフフフ まずはこのメスを手懐けるだったな」
「はい、邪竜王様」
ギールは裕未の耳元に顔を近づけると言い聞かせるように話をはじめた。
「私の声が聞こえていますね。あなたの名前はユミ、そうですね」
「もっと…もっとキモチよく………え…ええ……わたしは紫苑…裕未よ…」
「では、あなたは何者ですか、ユミ」
「…わたし?…わたしは……ドラゴン…レッド……邪竜帝国と……ヒャィッ…はふぅぅ……いい…いいの…もっと…」
裕未が途切れた言葉を並べているとギールは荒々しく彼女の胸を鷲づかみにして激しく揉みほぐした。
「そうですか、あなたはキモチのいいことを望んでいるのですか。
 だったら、いま話そうとした言葉は二度と口にしてはいけません。いえ、全て忘れなさい」
ギールの手は裕未の胸から下腹部、陰部へと移動する。
「はひぃぃ…そこ…きもちいひ……はひ…すべて…すべて……わす…」
ギールの言葉をおうむ返ししかけた裕未は途中で言葉を止めて眉間にシワを寄せた。
「…い…いや…わすれなひぃぃぃ……あひ…あひ……もっと…つよく……もっとぉ」
ギールはクロッチのイボのあったあたりを強く押し込んでいた。
「ユミ、全てを忘れなさい。そうすれば、あなたがして欲しいこと、望むことをして上げます」
自分の言葉に裕未がピクンと体を振るわせたことを確認したギールは、裕未に見えるように爆弾を起爆させるカメの甲羅を取り出した。
「そ…それは…」
裕未は甲羅に手を伸ばし掴もうとしたがギールはそれを許さなかった。
「ユミ、全てを忘れなさい。そうすれば、これを押して人間たちの泣き叫ぶ悲鳴を聞かせてあげますよ。
 あなたが望むゾクゾクする快感を得ることができますよ」
「あ…あぁ………泣き叫ぶ声…人の悲鳴が聞きたい……ゾクゾク…したい…」
「ユミ、これが最後のチャンスです。 全てを忘れなさい」
「これが…最…後…」
「そうです。これが最後です。全てを忘れなければ、これは!」
ギールが甲羅を握りつぶそうとすると、裕未は甲羅を見つめていた虚ろな瞳をオロオロさせてギールを見やった。
「す…全て…全てを忘れます………だから…悲鳴を……人々が泣き叫ぶ声を…聞かせて…下さい…」
皮に仕込まれていた催眠誘導効果がある薬と昂められた快楽で、裕未はギールの言葉を従順に受け入れ始めた。
「クックックッ…いいでしょう。では、あなたは何者ですか?」
「はい…わたしは…わたしは…」
裕未はしばらく瞳を彷徨わせてから
「…わたしは………すみません…わかりません……わからないです…」
「それでいいのですよ。では、あなたが何者なのか、わたしが教えてあげましょう」
「はい…お願いします……教えて…下さい…」
鋭い眼光は失せ欲情に潤む瞳でギールの冷たい眼をみつめる裕未。
「あなたはユミーザ 邪竜帝国に身も心も捧げる邪剣士ユミーザです」
「…わたし…わたしはユミーザ…邪剣士…ユミーザ……邪竜帝国に身も心も捧げる…」
ギールは満足気に頷くと同じ質問を繰り返し、裕未に何度も同じ答えを答えさせた。
「あなたは何者ですか?」
「…はい…わたしは邪剣士…邪竜帝国に身も心も捧げる邪剣士ユミーザです」
「そうです。いまわたしが教えた事は、何があっても忘れてはいけません」
「はい わたしは邪剣士ユミーザ、邪竜帝国に身も心も捧げる邪剣士ユミーザです」
「クックックッ…いいでしょう。ユミーザ、これを押して人間どもの泣き叫ぶ声を心行くまで楽しみなさい」
「はい……ありがとう…ございます…」
返事をしながら裕未は淫猥な笑みを浮かべ、目の前に出された甲羅に手を伸ばし迷わずその一つを押した。
「はうぅぅぅぅぅぅぅ…」
自分の指が生み出した逃げ惑う人々の悲痛な叫びと悲鳴を聞いた裕未はビクビクと全身を痙攣させながら意識を失った。
「グフフフ 気をやったか… グフ、グフフフ…いま思えば、あれもいいメスだったな ギールよ」
玉座に戻った邪竜王が含みのある物言いでギールを見やる。
「クックックッ かしこまりました邪竜王様。この邪剣士ユミーザに奪還させましょう」
「グフフフ お前に任せる」
「はい、邪竜王様 では、ユミーザの仕込みに入りますので失礼致します」
ギールはまだ体を痙攣させている裕未を抱き上げると玉座の間をあとにした。

身も心も捧げる者 -3-



青とも黒とも表現できない光で満たされた爬虫類が棲むに相応しいおどろおどろしい空間。
その奥に設けられている玉座の前に案内された裕未。
だが、玉座の周囲は黒い霧が立ち込めたように暗く何も見えない。
「邪竜王様 新しい邪剣士をお連れ致しました」
「なっ!!」
ギールの口から出た思いもよらない言葉に裕未の言葉がつまる。
「グフフフ ご苦労であったギール。この禍々しい力、邪剣士に相応しい。気に入ったぞ」
「わたしを邪剣士にする? 邪剣士に相応しい禍々しい力を持っている? ふざけないで!!」
「ふざけてなどいませんよ。紫苑裕未 あなたは我々邪竜帝国を八つ裂きにしたい、一匹残らず屠りたい
 そう言う気迫で満ち溢れています。それは我らが人間を襲い楽しんでいるのと同じ、あなたは我々を屠り楽しんでいる」
「違う!! 一緒にしないで!!」
ギールを睨む裕未の眼は殺気に満ち溢れている。
「クックックッ 同じですよ。あなたなら最高の邪剣士に」
「黙れ!! お前たちと一緒に…えっ!?」
声をあげながらギールを指差した裕未は周囲の光を反射して妖しく輝いている指先に目が止まった。
「こ、これは… いつのまにこんな…」
身に着けるときは茶色く干乾びてカサカサだったスーツは本来の美しい輝きを取り戻し黒光りしていた。
「クックックッ…」
眼をギラつかせて、どこか含みのある笑いを見せるギール。
「まさかギール、わたしを騙して… なによこんな物!! えっ!?」
身頃の重なりは綺麗に張りつき、どこが境目だったのか判らなくなっていた。
自分の胸元を必死になって弄っている裕未をギールが嘲笑いながら
「こんなに簡単にワナにかかるとは思いませんでしたよ。クックックッ そんなに必死にならなくても
 あなたの心が我らのモノになれば、自由に脱げるようにしてあげますよ」
「うるさい!! こ、こんなもの脱げなくても、何をされてもわたしは爬虫類の仲間になどならない!!」
「仲間? クックックッ 勘違いしないで下さい。あなたは邪竜帝国の奴隷になるのですよ」
「ど、奴隷ですって!! こんな物着せたくらいで、爬虫類の分際で調子に乗るんじゃないわよ!!」
「その爬虫類の命令にあなたは悦んで従い、媚びるようになるんです。 クゥクックッ…」
「このヘビヤロウ…言いたい放題…」
裕未は怒りで全身を震わせ、今にもギールに飛び掛ろうとしていた。
「おっと 紫苑裕未、大人しくしていないと…」
裕未が立っている足元の床が白く明るくなり、彼女がギールに拉致された街の風景が映し出されると
ギールは爆弾を起爆させるカメの甲羅を取り出して、その一つを迷うことなく押した。
「ギール!! キサマ、約束まで破る…えっ!?」
爆発に巻き込まれた人々の逃げ惑う姿、悲鳴を耳にした裕未が自分で自分の体を抱きしめる。
「あぁ…」(な、なに…どうして…)
「ウン? 今の声…どうかしましたか?  まさか逃げ惑う人間の悲鳴を聞いて感じて」
「バ、バカじゃないの! そんなことあるワケ…」
図星で動揺している裕未の様子を確認しながらギールがまた一つ爆弾を起爆させた。
「ギール! やめぁぅっ…」(どうしてこんなに……まさか…ホントに悲鳴を聞いて…)
背筋がゾクゾクし全身の毛が逆立つような快感を覚えた裕未は小さく声をもらして身を震わせた。
「クックックッ…心地よい響きでしょう」
思惑どおりの反応を見せる裕未を見やりながら、続けて爆弾を爆発させるギール。
「やめっはぅっ… そ…そんな…わけ…」(うそ…いま…わたし…… …なかで…なにか…)
軽い絶頂を迎えた裕未は陰部に違和感を感じたが、一つまた一つと爆発が起こるたびに違和感は薄れ、身体は素直な反応をみせる。
「はうぅぅぅ…」
数回目の爆発で立っていられなくなり、堪らず両膝をついた裕未が青黒い天井を仰ぎ、だらしなく開いた口元からこぼれた涎が首から胸元へと流れ落ちた。
「どうですか? 心地よい美しい悲鳴は… ゾクゾクして堪らないでしょう。クックックッ それはあなたが我々と同じ存在だと言う証なのですよ」
「そ、そんなこと……うふぁ…」(…頭が…しびれて…なにも………悲鳴が…キモチィィ……)
虚ろになった瞳を彷徨わせ、ぺたりと床にお尻をついた裕未。
「わたしも逃げ惑う人間の悲鳴を耳にしているとゾクゾクします。あなたはわたしと同じなのですよ」
「わたしが…ギールと…おなひぃぃ…」(も…もう…がまん…できない…)
大きく背中を反らせた裕未の手が胸と陰部を弄りはじめた。
「グフフフ ギール、何をしている。さっさと兜を被せてやればどうだ」
「はい、邪竜王様 このメスも兜で自我と記憶を奪い、邪剣士にするつもりでしたが、ルリーザのように兜を割られ
 人間に取戻されては面白くないと思いまして… このメスは新しい手法で邪竜王様に従う邪剣士に仕上げようかと」
「グフフ 新しい手法とはなんだ?」
惚けた顔で胸と陰部を弄り続けている裕未を邪悪な笑みを浮かべたギールが見やる。
「はい、邪竜王様 紫苑裕未に着せた皮はメスの邪竜兵の皮を剥ぎ取り、細工を施した物にございます」
「グフフフ メスの邪竜兵の皮に細工だと?」
「はい 皮の内側にオスの生殖器と思考を麻痺させ心を惑わす薬、体を麻痺させる薬、快楽を昂める薬を忍ばせておきました。
 それら全て、このメスの体液を吸収して効果をあらわします」

裕未が身に着けたスーツは装着者の体から分泌される体液を吸収すると本来の姿に戻り、能力を発揮するように細工されていた。
スーツの裏側にあった血管のような筋が体から発散された水分を吸収してクロッチの突起物に集められる。
水分を吸収した突起物は先端から麻酔効果のある物質を出しながら肥大化、麻酔で気づかれる事なく陰部に侵入すると
微かに振動して秘液の分泌を促し、秘液を吸収すると媚薬効果のある物質に作り変えて、突起物の先端から分泌する。
そして、スーツ表面に漆黒の輝きを取戻すと催眠誘導効果のある物質を気化させてスーツ表裏面から放出。
皮膚と呼吸から物質を吸収した装着者は気付かないうちに催眠状態に陥り、媚薬の効果で気持ちを昂められた。

裕未はギースの企てにまんまと嵌まり、ギースの言葉と陰部の侵入物にいいように操られていた。
ギースが巧妙な誘導術で裕未を誘導しながら手元のスイッチを押す。
すると偽りの映像と音が流れ、音に反応して裕未の陰部に侵入した突起物が激しく躍動し快楽をあたえる。
裕未は催眠効果と快楽で逃げ惑う人たちの姿、悲鳴を聞いて感じていると錯覚させられていた。


「グフフフ ギール、手間をかけてこのメスを邪剣士にする意味が我には理解できぬ」
「クックックッ ところで邪竜王様、先日のアレ はいかがにございますか」
ギールはルリーザ敗北の報告を行ったときに、邪竜王に預けた実験体の女の話を持ち出した。
「グフフフ 我が精を放ってもアレは生きておる。人間のメスの蜜と我が精が合わされば猛毒となりメスは死ぬはず。
 だが、アレは未だに生きておる。どうしてなのだギール」
「はい、邪竜王様 アレはわたしの実験で人の姿をした邪竜のメスに生まれ変わっております」
「グフフフ 人の姿をした邪竜のメス…」
邪竜王が玉座を離れ、裕未に近づき顔を覗き込んだ。
「グフフ ギール、このメスはアレと同じにできぬのか」
「クックックッ そのつもりにございます。邪竜王様」
「グフッグフッ できるのか、ギール」
「はい、邪竜王様に身も心も捧げる新しい邪剣士に紫苑裕未を作り変えます。いまはその準備段階にございます」
「グフッグフフフ ギール、詳しく説明しろ」
「はい、邪竜王様」
ギースは自慢げに自分が得た知識で行った実験の説明と報告をはじめた。

身も心も捧げる者 -2-



一週間が経過した日曜日、医師弓永さやかの拘束から開放された紫苑裕未は双子の妹紫苑裕香の任務のサポートに就いていた。
「不思議ですね。私はこの時代の人間ではないのに判らない物のほうが少ないなんて…」
裕未と裕香は自分のことを『るり』と名乗る女邪剣士ルリーザと街に来ていた。
「この知識は邪竜帝国に操られていたときに与えられたモノなんですね」
「石動博士から聞いた話では、るりさんは遥か昔、邪竜帝国と戦っていた私たちの先輩ってことでしたが」
紫苑裕未はさり気なく周囲を警戒しながら『るり』に話しかけた。
「はい 信じて頂けるかはわかりませんが、私は父と仲間たちと共に邪竜帝国の神殿から邪竜王が人を支配するために
 用意していた竜珠を盗み出し、その力を使って邪竜王を倒そうとしていました。ですが、私は神殿から逃げ出す途中で
 邪竜兵に捕らえられてしまって… それから先の記憶はありません。気が付けば石動研究所のベッドの上でした。
 石動博士のお話を伺い、文献も拝見させて頂きました。あれは間違いなく父の残した…」
「わたしは信じていますよ るりさん」
裕香が涙をこらえ話ている『るり』の肩に優しく手をやり微笑んで見せた。
「裕香さん…ありがとう  でも、裕未さんは私のことを…」
「ごめんね でも、るりさんはずっと姉さんを狙って…… 姉さん」
「ええ、ずっとついて来る。おそらく邪竜兵ね」
服装と不釣合いなサングラスをかけた集団が裕未たち三人のあとをずっとつけていた。
「ここでアイツらに襲われるのはマズイ。わたしが囮になって引きつけるから裕香はるりさんをお願い」
「うん 気をつけて、姉さん。 るりさん、遅れないでついて来て下さい」
「えっ、あ、はい 私の所為で…すみません 裕未さん」
「気にしないで、これがわたしの仕事だから」
冷たく言い放った裕未が相手の存在に気付いたフリをして走り出すと
裕香と『るり』は人ごみを利用してその場を逃げ出した。



大通りから少し脇に入った路地で裕未は邪竜兵に囲まれた。
「ようやくあなたを追い詰めることができました」
裕未を取り囲んでいる集団の一角が開き、冷たい眼をしたギールが姿を現した。
「お前はギール!!」
「私のことを覚えてくれていたとは」
「なるほど、狙いは『るり』…ルリーザじゃなくて わたしだったみたいね」
「はい 我々は敗北した者などに興味はありません」
「情けない。爬虫類の考えた姑息なワナにひかかるなんて…」
裕未はドラゴンレッドに変身しようと胸の前で両手をクロスさせた。
「おっと危ない、竜珠の力は使わないで下さい」
ギールはカメの甲羅を裕未に見えるように取り出すとその模様の一つを鋭い爪の先で押した。
「な、なに?」
轟音とともにビリビリと空気が震え、人々の叫び声が裕未の耳に届く。
「ギール! なにをしたの!!」
「爆弾 と言う物です。 大人しくしてもらうために一つ使わせて頂きました」
「な、なんてことを…」
「私にこれを使わせたくなければ、大人しく言うことを聞いて下さい」
「卑怯なマネを… 正々堂々わたしと勝負したらどうなの!!」
「仲間が到着するまでの時間稼ぎですか?ムダです。それに私は躯よりも頭を使うほうが好きなので」
「チッ…爬虫類らしくないヤツ…」
裕未はクロスさせた腕を崩さずギールを睨む。
「で、わたしをどうしたいの!」
「紫苑裕未 我が主があなたにお会いしたいと申しております」
「邪竜王がわたしに? 爬虫類に興味を持たれても嬉しくないわ」
「ルリーザを倒した戦士と会って話がしたいと申しております」
「それってまさか わたしに爬虫類の巣に来いと? 冗談は顔だけにしてよ!!」
「わたしは『大人しく言うことを聞いて下さい』と申し上げたつもりですが…」
「ギール? アッ!!」
ギールの指が動き2度目の轟音が轟く。
「あなたはこの街を破壊するおつもりですか? こう見えてもわたしは気が短い、次は全ての爆弾を爆発させます。
 紫苑裕未 わたしと一緒に来てくれますね?」
「わ、わかったわよ… あなたの言うとおりにするわよ」
裕未は唇を噛みしめながら両手を上げて抵抗の意志が無いことを示すと、ギールは顎で邪竜兵に裕未を捕らえるよう指示した。
「汚い手でわたしに触るな!! もう抵抗はしない、大人しく指示に従うって言ってるでしょう」
話ながら両手を後頭部の後ろに回した裕未をギールはしばらく見つめて口元を歪ませた。
「いいでしょう。 さぁ、こちらに」
小さく頷き歩き出した裕未はギールたちに気付かれないよう紅い竜珠が付いたネックレスを外した。
(これを邪竜帝国に渡すわけには行かない…)
そして表通りに止めてある黒の1BOXに乗るよう指示された裕未は、つまづいたフリをして竜珠を路肩の植え込みの中に忍ばせた。
「こういう時は、これを着けるんですよね」
邪竜兵に挟まれて座っている裕未の顔にギールはアイマスクを被せると部下に車を発進させるよう命令した。



移動し続けた1BOXは昼間でも光が全く差し込まない黒い霧に包まれた森の中に止まった。
「ここからは少し歩いて頂きますが、その前に用意しておいたこれに着替えて下さい」
ギールが茶色い塊を裕未の膝の上に置いた。
「爬虫類の皮? どうしてあなたたちの皮なんかを身に着けなければならないのかしら?」
「別にそのままでも構いませんよ。ただ、この黒い霧は人体に影響はありませんが…」
ギールが窓を開けて部下が持っていたハンカチを車外に出すと、瞬時に黒く変色したハンカチがボロボロと朽ち落ちていった。
「裸で我が主とお話して頂く事になりますが、よろしいですか?」
「うっくぅぅ…  わかった、わかりました着替えます。 一人にして頂けますか?」
「おっと、これは失礼しました。我々は外でお待ちしております」
車内に一人になった裕未はルームランプの薄暗い明かりの中で、ギールから渡された首から下を覆い尽くす
邪竜兵の抜け殻のようなスーツのチェックをはじめた。
(邪竜兵の抜け殻みたい… 表面は乾燥してカサカサしてるのに柔らく伸縮性がある)
裏返して内側のチェックも怠らない。
(見れば見るほど気味が悪いスーツね…ツルツルして手触りは良いけど、全身に走っているこの血管みたいな筋と
 このクロッチの突起物は……中に入る大きさじゃないけど…)
スーツの内側、クロッチ部に身に着ければ陰部にあたる位置に親指の先くらいの突起物が一つ付いていた。
「イヤな感じだけど…特にこのイボの中に何かが入っている訳でも無さそうだし、裸で邪竜王と対峙するほうが…」
突起物を抓んで確認した裕未はスーツを座席の上に置くと衣服を脱ぎ、着替え始めた。
(邪竜王が私と会って話がしたい? いったい何を話すの… その後はどうなるのよ… 竜珠を奪われる訳にはいかないから置いて来たけど…)
今になって竜珠を植え込みに忍ばせた事を後悔した裕未の体が小さく震えだした。
(何を弱気になってるの裕未!! 爬虫類ごときに負けないで!!)
両手で両頬を打ち、気合を入れ直した裕未は意を決し、スーツに足を通した。
前に切り込みが入ったスーツに体を入れた裕未は、もしもの時に動作の邪魔にならないようしっかり体にフィットさせると
開いたままの胸元の弛みを引っ張り、微かに粘着性がある身頃の端通しを重ね合わせて車を降りると軽く体を動かしてスーツを体に馴染ませた。
裕未が気にしていたクロッチの突起も体に触れているハズだったが気になるものではなかった。
(へェ 意外と機能的じゃない体がスムーズに動く。 わたしの体の一部みたい…)
「よくお似合いです。我が主もお喜びになられることでしょう。 さて、行きましょうか」
「爬虫類に褒められても嬉しく…?」
(邪竜王が喜ぶ? どう言う意味よ…)
ギールの言葉が気になり、スーツで覆われた手を見つめた裕未は言い知れぬ不安を覚えた。

身も心も捧げる者 -1-



白と赤の光沢のある強化スーツを纏った戦士の足元に黒い躯に銀のアーマーを着けた剣士が仰向けに倒れている。
「邪剣士ルリーザ…」
剣士の頭を覆い顔の上半分を隠していた二本の角がある銀竜の兜は真っ二つに割られ、露になった美しい顔と鎧と
同じ色をした銀髪が額から流れでた鮮血で紅く染まっていた。
「赤い血… ルリーザ、どうして私たち人間と同じ赤い血を…」
これまで倒してきた邪竜帝国の兵士は人とは異なる姿で濃緑の血を流してきた。
だが、強化スーツの戦士の前に横たわる邪剣士ルリーザは人と同じ姿で同じ赤い血を流している。
「ウゥッ……ルリ…ザ… ちがう……わたしは…るり… ウウッ…」
邪竜帝国の邪剣士ルリーザは自分のことを『るり』と名乗り意識を失った。
彼女が意識を失う寸前、鎧と同じ色をしていた瞳と美しい銀髪は黒く変化した。
「『るり』? どう言うこと…なの」
足元で横たわっているルリーザの首に触れ、彼女の生死を確認していると強化スーツのフェースカバー内に
ルリーザが作り出した邪竜空間が消滅したことを告げるメッセージが表示された。
「ドラゴンレッド紫苑です。 邪剣士ルリーザを撃破、彼女を確保しました。町の邪竜兵はどうなっていますか」
『ドラゴンレッド 司令室です。 邪剣士バジルの乱入で多くの邪竜兵を取り逃がしました。
 ドラゴンイエローがバジルの攻撃を受けて負傷しています』
「了解です ルリーザの回収をお願いします」


「裕未君 怪我は大丈夫かね」
「はい 大したことありません。私が一週間 迅雷君が一ヶ月、弓永先生に拘束されます」
「ハハハ…拘束か  彼女にはドラゴン隊員の健康管理を一任しているからね」
「それより 石動(いするぎ)博士、ルリーザはどうですか? 何かわかりましたか」

ここは邪竜帝国と戦うドラゴンナイツの拠点 石動研究所。
邪竜帝国邪剣士ルリーザを死闘の末、撃破捕獲に成功したドラゴンレッド紫苑裕未が
石動研究所創設者で司令の石動道三の部屋を訪れていた。
「ルリーザの体を分析した結果、彼女は間違いなく人間だと言うことが判った」
「エッ! 本当ですか石動博士」
「彼女の体に不自然のものは何も無い、私たちと同じ人間だよ。いま彼女の装備品の分析を行っているが
 これまでに回収した邪剣士、邪竜兵の物と同じだろう」
「詳しいことはルリーザ…『るり』と名乗った人が目を覚ますのを待つしかないってことですね」
「そうなるね」
石動道三と紫苑裕未は壁のモニターに映し出されている治療中のルリーザを見つめていた。

数年前、廃墟となった古い神社の祠で発見された文献で石動道三は
かつて、人とは異なる姿をした邪悪な生命体が存在し、彼らが五つの竜珠の力に敗れ、永い眠りについたこと
その邪悪な生命体が再び目覚める日が近いことを知ると、その文献の記述に従い、彼らに対抗する力
五つの竜珠とその力を自在に操ることができる者を探し出し、復活した邪悪な生命体を迎え撃った。



「邪竜王様、ルリーザが人間の手に堕ちました」
邪竜帝国。彼らはワニ、トカゲ、ヘビと言った爬虫類と人が合体したような姿をしており、硬い鱗で覆われた躯と
鋭い牙と爪を持ちながら、まだ人間が手にしていない未知の金属でできた鎧兜に剣や槍、弓矢で武装していた。
「グルルル 人間を支配する為に生み出した力が我が野望を阻む力になるとは…」
架空の生物、竜を想像させる姿をした邪竜王がその怒りをぶつけるかのように、食事として運ばれてきた人間の腕を喰い千切る。
「グルルル ルリーザは我が手より竜珠を奪い我らを深い眠りに就かせた忌まわしき人間が一子、その報いとして未来永劫
 我らの奴隷として仕えさせるつもりであったが……邪竜帝国に弱者は不要。 ルリーザを倒した戦士、竜珠の力を纏いし
 戦士とあらば…… グフフフ 我らは新しい力を得、人間は我らに勝利する術を失う。 まさに一石二鳥、そうは思わぬかギール」
その問いかけに邪竜王の片腕、邪竜帝国参謀ギールが畏まり答えた。
「邪竜王様、ですぎたまねと思いましたが、すでに我が手の者を放っておきました。 それとご報告がございます」
血が混ざった涎を滴らせ、邪竜王が金色の瞳を輝かせる。
「グルルル なんだギール」
「科学者と呼ばれている人間から得た興味深い知識を捕らえた人間に試してみました。まだ実験段階ですが」
ヘビに似た顔をしたギールは部下に命令すると一人の人間の女を邪竜王の前に運ばせた。

邪竜帝国は人間を食べることでその人間の知識を自分のモノにできる。
だが人間の知識すべてを自分のモノにできる訳ではなかったが、参謀ギールはその能力に長けており
捕食した人間の知識すべてを自分のモノにすることができた。

「まだ、実験段階ですので詳細なご説明は控えさせて頂きますが、邪竜王様、暫くこれをお傍に置かせて頂けないでしょうか
 邪竜王様もご満足頂けるのではないかと」
「ギール、我に実験の手伝いをせよと申すか。グフフフ、よかろう」
「ありがとうございます。邪竜王様」
プロフィール

孫作 ( magosaku )

Author:孫作 ( magosaku )


現在の閲覧者数:
カレンダー
04 | 2024/05 | 06
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ
カテゴリー
リンク
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Twitter
ブログ内検索