2ntブログ
携帯アクセス解析
  1. 無料アクセス解析

Rouge et noir - 3 -



「と言う訳ですので『S.S.B』からお二人をお守りするためにもですね… 何より、お二人に
 対S.S.Bチームに加わって頂けると戦力も大幅に増強され、より多くの人を『S.S.B』から守ることができます」
夕方、栗栖たちと別れて下宿先の道場に戻ると、直ぐに『X-fix』のスカウトと名乗る男が現れた。
「だから、先程から申し上げていますように、エックスとかエスとかに入るつもりはありませんからお帰り下さい」
「ですが、あなたたちにその気が無くとも『S.S.B』に狙われると誘拐されて無理やり…うっ、あっ」
スカウトの男は言いかけた言葉を必死で飲み込み
「危ない、危ない、勢いで話てしまうところでした」
「気になるじゃないですか!! 誘拐されて無理やり何ですか、そこまで話したらいいじゃないですか。
 解るように、その『S.S.B』と言う組織とあなたたちの組織のことを詳しく説明して下さい」
「詳しくご説明するのは構いませんが、そうなるとメンバーに加わって頂くことになりますよ」
嬉しそうにあやめの顔を見るスカウトの男。
「はぁぁ もういいです。今日あったことは誰にも話しません。どちらの組織にも加担しません。
 それでいいでしょう、ですからお引取り下さい」
「いや、それでは困るんですけど…  わかりました、今日のところは護衛を残して引き上げます」
(なかなか手強いお嬢さんだ、ここはもう一人のお嬢さんから攻め落とすとしますか。
 報告通りの素材であれば『S.S.B』に渡すわけには行きませんからね。今日は監視を付けて撤収しましょう。
 どのような手段を使ってもこの人たちには『X-fix』のメンバーになって頂かないと私の評価も…)
眼鏡の奥で輝く怪しい目にあやめは気付いていなかった。
「ちょ、ちょっと待って!! 護衛を残してって、見るからに怪しいあの黒スーツの人たちですか?」
あやめの指差す方向に黒いスーツにサングラスの男が数名、住居の周りをうろついている。
「はい、そうですが何か?」
「何かって… ここには剣道の練習をしに子供が大勢来るんですよ。見るからに怪しいあの人たちは困ります。
 それに栗栖さんたちより強いとは思えないですけど…  栗栖さんたちのケガ、大丈夫ですか?」
「え、ええ、連戦続きでしたので心身共に疲弊していたのでしょうね。彼女たちはベストな状態で挑めなかったようです。
 特に瀬川隊員はメンタル面に…… あ、いや、すみません気にしないで下さい。ハハハハハ」
「ご心配なく、それぐらいで心は揺らぎませんから」
「はぁぁ そうですか。 参りましたねぇ」
汗を拭いながら男はいかにも困っていますという顔をしてチラチラとあやめを見ている。
「とにかく、あの護衛… わたしたちを監視するのでしたら、もっとまともな人をお願いします」
「か、か、監視だなんてとんでもない。それにまともなと言われましても… でしたら女性の隊員を護衛につけさせて頂きます。
 が、深夜は狙われる可能性が高くなりますので男性隊員とペアを組ませると言う事で宜しいでしょうか?」
「ご自由に」
「それでは大至急、別の護衛を手配します。  今日のところは私もこれで失礼しますが
 また明日、お邪魔致しますので、もう一度ゆっくり考え直して下さい」
いやらしい笑みを残してスカウトの男は車に乗り込み帰って行った。
(胡散臭い人… あの三人はホントにいまの人と同じ組織にいるのかしら…)



朝靄の中、道場近くにある神社に長い黒髪を後ろで束ね、白の胴衣を身に着けたあやめの姿があった。
大木に向かい真琴の祖父から借りた摸擬刀を構えて立っている。
(もう一度、シルヴィーさんと…)
剣を交えたシルヴィーのことが忘れられないあやめは彼女の幻と向かい合い微動だにしなかった。

 ガサッ ガサガサ  ウッ! ウゲ!

靄の中から聞こえた物音と女性の呻き声。
「誰!!」
音と声がしたほうを向いて摸擬刀を構えると靄に四つの影が映し出され、聞き覚えのある声があやめの耳に届く。
「榊山あやめ お前と話がしたくてな」
声の主が顔の見える距離まで近づいてくるとあやめは摸擬刀を鞘に収めた。
「シルヴィーさん」
もう一度会いたいと願っていた人物に再び会えた喜びにあやめは笑顔で駆け寄っていた。
「わたしもシルヴィーさんに……!?  その人たちは『X-fix』の…」
シルヴィーの背後にいる二人が自分の護衛にあたっていた『X-fix』の女性隊員を肩に担いでいることに気がついた
あやめの顔から笑顔は消え、スカウトの男の言葉が脳裏を過ぎる。
(ホントに『S.S.B』という組織は女性を誘拐しているの?)
「殺してはいない。騒がれては面倒なので眠らせただけだ」
シルヴィーが答えていると隣の人影が後ろの二人に指示したらしく、シルヴィーとその人影を残して朝靄の中に2つの影が消えた。
「ま、待って下さい、シルヴィーさん あの人たちをどうするおつもりですか」
「お前が気にすることはない。 それとも、もう『X-fix』の犬になったのか?」
「いえ、丁重にお断りしています。訳のわからない組織に入るつもりはありませんから」
「それは私が誘っても無駄と言う事か」
「はい。この光景を目撃してしまっては尚更です。シルヴィーさん『X-fix』の方から『S.S.B』と言う組織は
 女性を誘拐しているとお聞きしましたが本当だったのですね」
「だとしたらなんだ? どちらにも加担しないと言うお前には関係のないことだろう」
「いいえ、あのお二人はわたしの護衛って事になっているので黙って見過ごす訳にも行きません」
「フッ…なるほど。 ではこちらも目撃者のお前を見逃すことは出来ないな。 クィンス」
「は~いシルヴィー様 よいしょ、よいしょっと…  おもぉ~い」
自分の背丈よりも長い棒を手に立っていた人影がそれを引きずるように運んでくる。
「あやめ 私と真剣で勝負しろ。お前が勝てばあの二人を開放する。 だが、私が勝てばお前の全てを頂く」
シルヴィーの言葉にあやめはニコリと微笑み
「是非お願いします。わたしもシルヴィーさんともう一度戦いたいと思っていましたから」
あやめは躊躇うことなくシルヴィーの出した条件を承諾した。
「ちょっとぉ~ だったらボォーっとしてないで取りに来なさいよぉ~」
シルヴィーと見つめ合っているあやめをクィンスが口を尖らせ呼びつけると
あやめはムッとした表情でクィンスに近づき、奪い取るように彼女が持っていた棒を受け取った。
「なによぉ~ それが上官に… ハァ~もういいですぅ
 あなたがシルヴィー様の部下に相応しい素体か見せてもらいますぅ
 ぶっちゃけありえないと思いますけどぉ~ シルヴィー様にケガだけはさせないで下さいねぇ~」
クィンスは品定めするかのようにあやめの周りをぐるりと周ると、それ以上は何も言わずに
シルヴィーの隣に戻り、睨むようにあやめを観察し始めた。
「あなた何ですか!! 上官だの部下だのと訳のわからない…こ…と…?」
あやめはクィンスのことよりも受け取った得物に気がいった。
「これって…真剣のなぎなた」
受け取った得物の重量感と摸擬刀にはなかった刃の美しい輝き。
「言ったはずだ、真剣での勝負だと」
目を丸くしてシルヴィーを見やったあやめは苦笑して
「クスッ 無茶苦茶ですね。ホントに真剣を用意していたなんて」
受け取った得物を両手に持ち、頭上で回転させてからシルヴィーに向い構えてみせる。
「私には少し軽い気がしますが、仕方ないですね」
歓喜に満ちた顔のあやめに
「嬉しそうだな。自分の命を賭けた勝負だというのに」
「そうですね。自分でもおかしいと思います。負ければ命を失うことになるのに怖いと感じない」
「面白い奴だ」
向かい合った二人がゆっくりと距離をとると剣を構えた。



「どうしたこの程度か?」
勝負は一方的なものだった。
懐に飛び込んでくるシルヴィーの華麗な剣舞に隙はなく、あやめは反撃どころかまともに防ぐこともできず
白い胴衣に血が滲み、出血と絶え間ない攻撃に疲労の色が濃くなっていた。
「はァ…はァ……ふぅ……ふぅぅ……冗談は止めてください、シルヴィーさん」
呼吸を整え次の攻撃に備えようとするあやめ。
(まったく手が出せない… 力の差があることはわかっていたけど……悔しい…)
「お前の実力、見せてもらった。辛うじて合格と言ったところだが、やはり二人揃えなければ意味がないか」
ゆっくりと剣を構えて最後の一撃に集中力を高めるシルヴィー。
「二人? 真琴とってことですか。  馬鹿にしないで下さい!! わたしだけでも」
「フッ…ならば証明して見せてみろ」
(!! 凄い…シルヴィーさんの気迫がビリビリ伝わってくる。 でも、このまま終わるのはイヤ
 せめて一太刀…… シルヴィーさんは必ず初撃で突いてくる…それに合わせれば)
防御しながらシルヴィーの踏み込んでくるタイミングを計っていたあやめは次の一撃に全てを賭けるつもりだった。
がしかし、流れるように踏み出したシルヴィーの速さはそれまでの攻撃を遥かに上回っていた。
(は、速い…)
あやめがそう感じたとき、シルヴィーの剣はあやめの胸を貫いていた。
「…コフッ……やっぱり…ダメ…でした……くやしい……わたしも…シルヴィーさん…ように……強く…なり……」
微笑みながら涙を流したあやめの首がこくりと折れた。
「いいだろ。榊山あやめ、お前の願い叶えてやろう」



トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

シルヴィーと正面きって殺りあうとはあやめちゃんもすごいですね。
彼女がこれからどうなって行くのか、目が離せません。

あやめ、捕まっちゃいましたね。これであやめの行く末はほぼ決まりかな?
となると、真琴の動向が気になります。果たしてどちらにつくのか、はたまた別の展開があるのか・・・。
それにしても、あやめの度胸には感服します。


<舞方雅人さん>
強い相手を見ると剣を交えてみたい、命を懸けて戦ってみたい
それが彼女のロマンなのです(笑


<metchyさん>
真琴くんの中にある武士としての心はあやめ以上とお見受け致します。
きっと目標であったあやめを倒したシルヴィーさんに戦いを挑む!! のかな?
プロフィール

孫作 ( magosaku )

Author:孫作 ( magosaku )


現在の閲覧者数:
カレンダー
04 | 2024/05 | 06
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ
カテゴリー
リンク
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Twitter
ブログ内検索